『自分のため』の創作ノート

創作を「はじめる」「つづける」ことについて考えていくブログ

『自分のため』の小説のススメ

小説のイメージを固める

それでは「あなたが書く小説のイメージ」を固めていきます。
固めるイメージは、この3項目です。

  • 小説の長さ
  • 小説のジャンル
  • 『第一の読者』

小説の長さ

まずはひとつ目。書いていく小説の長さから。
あらためての確認ですが、あなたはまだ初心者です。
いまから小説を書きはじめるところです。
(すでに書いたことがある人もいるとは思いますが、わかりやすいようにそういう前提で進めていきます)


初心者が、いきなり大長編小説を書きあげるのは、とてもむずかしいでしょう。
いきなり大長編小説を選ぶのは『レベルに合っていない高いハードル』です。
初心者が最初にチャレンジする小説は、細部がはっきり見えるくらい短く、簡単な物語にしておくといいでしょう。


もしどうしても。
どうしても大長編小説に挑みたいのであれば、長い物語をこまかく分割し、中編程度の文量におさえた “一区切り” を設けてください。
『レベルに合っていない高いハードル』を調節し、飛べるくらい低いハードルに変えてしまうのです。


大長編小説は、競技で例えるならマラソンです。
運動したことのない人が、いきなり42.195kmは走れませんよね。


しかし小説の執筆作業には、実際のマラソンのような制限時間は存在しません。
小さなゴールに分割して、時間をかけてクリアしていくことも可能です。
1kmのジョギングを毎日重ねれば、初心者でも完走できる日がやってきます。
それでも、めざすべき場所がないと辛いものなので、はじめのうちは見えるところにゴールを設定してください。
ページ数で言うなら、どんなに長くても100ページ程度にしておきます。


小説のジャンル

ふたつ目はジャンルです。
これは単純に、あなたが一番好きで、よく読む小説のジャンルを選びます。
あなたの好きな小説は、どんな小説ですか?
ファンタジー、歴史、SF、ミステリーと、小説にはさまざまなジャンルがあります。
好きなジャンルが複数あるときは、自分にとって一番なじみのあるものにしてください。
いままでに読んだ小説は、基礎知識であり、あなたの好みを明確にあらわしています。
本棚やブックマークを見直して、一番好きでなじみのあるジャンルを探してみましょう。


『第一の読者』

最後は、『第一の読者』です。
『第一の読者』のイメージは、ひとりだけにしておきます。
複数人の好みに合わせて小説を書くのは、初心者にとって非常にむずかしいからです。


あなたが書く小説を、誰よりも先に、そして誰よりも真剣に読んでくれる人。
小説を書いていて迷ったとき、「この文章でわかりますか?」「表現は足りていますか?」と問いかける相手。
あなたの小説の、道先案内人となる人物――それが『第一の読者』です。


そんな『第一の読者』をイメージしていきます……が、ここは注意深く、慎重にやっていきます。
なぜなら、この『第一の読者』のイメージは、『2つのハードル』が出現しやすいエリアだからです。
たとえばこんな感じですね。


「たくさんの読者に読んでもらいたい」
「PV目標はこれで、ブックマーク数目標はこれで、評価は全部でこのくらい欲しい」
「なんだったらこの処女作でヒットを出して、すぐにでも書籍化したい」


「そのためには読者の好みや流行を分析して、みんなにウケる小説を書かないと――!」


……どうでしょう。
身に覚えがある人もいるのではないでしょうか?


こういう “目標” をもったまま『第一の読者』をイメージすると大変です。
「流行に敏感で、その人が評価したらヒット確定のキュレーター的存在」というような、ものすごい人物となってしまいます。
どこにもいません、こんな人。
もしいるとしたら、出版不況がさけばれているいま、大手出版社が放っておきません。


もちろん、イメージするだけなら可能です。
可能ではありますが、初心者がこの人に合わせた小説を書くことができるでしょうか?


「こんなんじゃダメだよ。まったく伝わらない」
「全然おもしろくない……」
「この程度でヒットを狙えると思っているの? 分析が足りていないんじゃない?」


こんなことを言ってくる『第一の読者』では、小説を書く手が止まってしまいます。
小説を書いているあいだ、ずっとダメ出しさせるのは辛いものです。
初心者に、耐えられるものではありません。


さきほど出てきた “目標” は、『2つのハードル』を生み出しやすいものです。
もし、こういった “目標” を持っているのなら、いまは横においておきましょう。
高い“目標”は、中級者、上級者となってからめざすもの。
初心者が、現時点でめざすべき “目標” はひとつだけ――それは「書く力」をつけることです。


初心者であるあなたは、小説を「書く力」をつけるために、執筆という長い長い道のりの完走をめざします。
その道のりを行くときに、強い北風が吹いていたら辛いですよね。
長くけわしい道だからこそ、できるなら太陽に見守っていて欲しいものです。


小説を書く、長い長い道のり。
その道のりの伴走者となってくれる『第一の読者』は、まさしく太陽のようなイメージの人物にしておきましょう。
 -短くとも、つたなくとも。あらたな一行が生まれれば喜んでくれる。
 -とにかくあなたの小説が好き。
 -作者である自分と趣味や好みがまったく同じで、暗く苦しい展開になっても、完結するまで興味を持ちつづけてくれる。


こんな都合のいい人はいないよ、と考えるのはやめましょう。
心配はいりません。この人は、思っているより身近に存在しています。
それは、作者であるあなた自身です。

  • 短くとも、つたなくとも。小説を書きたいと願う自分が、あらたな一行を生み出すことがうれしい。
  • 書いた小説を、好きだと言い切れる。
  • 自分の趣味や好みをもとに書いた小説だから、暗く苦しい展開になっても、完結までおもしろく感じられる。


こういう気持ちを抱いているあなた自身こそ、『第一の読者』にふさわしいと思いませんか?


一人よがりにならないかと、心配する必要はありません。
はじめはむしろ、一人よがりになるくらいでちょうどいいのです。
初心者のうちは、文章の方向性をたしかめるためにも、徹底的に自分好みにこだわるべきです。
意外なことですが、読むときの小説の好みと、書く小説の方向性がおなじとはかぎりません。


「ずっとギャグ系の小説ばかり読んできたけれど、いざ書いてみたらシリアスの方が向いていた」
「なにより恋愛小説が好きだったのに、恋愛描写がうまく書けず、むしろ政治情勢の方が得意だった」


このように、小説を書きはじめてから、自分の得意分野に気づくことがあります。
筆者自身も、こういう経験しました。
登場人物たちの心理が、ことこまかに描写されている小説より。魔法や剣を使った、派手なアクションが多い小説が好きだったのですが。
いざ自分で小説を書いてみたら、心理描写はスラスラと筆が進み。逆にアクションがうまく書けず、四苦八苦しながら絞り出すはめになりました。


好みのタイプと、実際の結婚相手は違うなんて話もありますね。
それと非常に近いことが、執筆でも起こるのです。


初心者であるあなたは、自分が読む小説の好みは知っていても、自分が書く小説の得意分野はまだ知らない状態です。
書く小説の得意分野を知るためにも、『第一の読者』=『自分のため』に小説を書いていきましょう


読者ウケしない作品を書いて、ムダになってしまうのではと考えているのなら、まだ高い “目標” にしばられています。
小説を「書く力」をつけることが、初心者であるあなたの “目標” だったはず。
「書く力」をつけるにあたって、ムダな作品などありません。
もし、どうしても意識を変えられないなら、作品と力まず、習作という言葉に置きかえてしまいましょう。
言葉を置きかえるだけで、簡単にハードルを下げられるときもあります。


固めたイメージを書く

ここまで読んで、意識は切りかわりましたか?
『無意味なハードル』『レベルに合わない高いハードル』を、頭のなかから排除できたでしょうか?
排除できたなら、ちょっとだけできそうな気持ちになってきたはずです。
いまの気持ちが消えないうちに、あなたの一作目となる小説のイメージを書き出してみましょう。

  • 小説の長さ……およそ○○ページ(結果的にずれてもOK)
  • 小説のジャンル……○○○○
  • 『第一の読者』……作者である自分自身!


書けましたか?
書けたのなら、小説を執筆する環境(パソコン、スマートフォン、原稿用紙)に保存します。


保存できたなら、最初のエリアはクリアです。
お疲れさまでした。



つぎからは、「物語の骨格」に着手していきます。
ここは一気にやっていきたいので、休憩が必要なら、いまのうちにとっておいてください。
たくさんの紙(サイズはA4くらい)、書きやすいペン、タイマーが必要になりますので、これらも休憩中に用意しておきましょう。

まとめ

小説のイメージを固める。

小説の長さ……どんなに長くても100ページ以内。いきなり大長編に挑まない。どうしても挑みたいなら、100ページ程度の一区切りを設け、そこをゴールにする。

小説のジャンル……自分が好きで、一番なじみ深いジャンル。

『第一の読者』……作者である自分自身! 最初は、書く小説の得意分野を追求するつもりで。



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